私は彼に愛されているらしい
「もうぶっちゃけるけど…俺は十分に遊んで来たよ。こんな性格だ、私生活でも誰かを支えたくて色んな女の子に声かけて付き合ってきたよ。だからもう落ち着きたい。」

心の底から湧き上がる衝動に身を任せて俺はみちるさんを抱きしめる。

まるで壊れ物に触れるように優しく、次第に気持ちが高まって力を込めて彼女を精一杯引き寄せた。

「やっと見つけたんだ。」

掠れた声を絞り出して彼女の耳に届ける。

「年下が不安だって言うなら今以上に傲慢になって引っ張ってってやる。」

「…あは。それはちょっと困るな。」

「任せろって。悪いようにはしない。」

そう言うなり俺は背中に感じた温もりにやすらぎを覚えた。

「アカツキくんは十分だよ。できればちょっと遠慮してほしい。もう振り回されてくたくたなんだもん。」

「よく言うよ。振り回してんのはそっちだって言ってんじゃん。」

「ええ?」

くすくす笑いながらみちるさんが俺の胸にすり寄ってくる。最高に可愛い彼女の肩に顔を埋めて俺は小さな唸りをあげた。

頼むから気付いてくれよ。

「恋人から結婚観を聞かれたら多少は意識するでしょ。全く他人事だったから俺はかなりへこんだし。」

「だってそんな話1回もしたことなかったじゃん。」

「普段からみちるさんは何でも他人事すぎるんだよ。もっと自意識過剰になって調度いいと思うけど。今日だってどれだけ俺が考えたか知らないでしょ。」

俺の言葉に瞬きを重ねると、みちるさんは体を離して台所を眺めた。そしてまさかというような表情でこちらを見てくる。

まあ前より察することが出来るようになったか。

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