涙の色
 朝食を済ませると彼は着替えた。
彼女は外で待っていた。

 彼女の服を買い、二人は小さな店に入った。
猫しか入らないようなビルとビルの隙間を抜けて見える、鮮やかに装飾された看板。
今はその鮮やかさも鈍くなっている。
二人の場所。

 二人は立ち止まった。
入ってすぐ見える陳列棚。
そこにあったもの。
それはもうなかった。

 二人は店内を見渡した。
だいぶ変わっている。
二人はそれを探した。
彼女が彼の手を握った。
奥の方に引かれ、古い陳列棚の前で止まった。

 七色に輝いているもの。
ホコリをかぶりながらもそれは二人の前で輝いている。
ここから始まった。
二人の間に七色の橋をかけたもの。

 二人はそれを買い、家に帰った。
そしてそれを部屋の一番目立つ所に置いた。
それは真っ白だった部屋に浮かび、二人にそそがれた。

 それから部屋は鮮やかさに満ちていた。
二人とも好きな色を好きな場所に飾り付け、以前の面影は二人の記憶の底に沈んでいった。
< 4 / 5 >

この作品をシェア

pagetop