涙の色
 何もない空間。
色すらない。
空間と呼べない空間。
無の中を彼は漂い続けた。
ふと後ろから鮮やかな光が射した。
彼は振り向こうとしたがそこで目が覚めた。

 彼は左側を見た。
いつも通りの白い壁。
それ以外なにもなかった。
彼は体を起こした。
ベッドの真ん中にいた。

 彼はベッドから降り、シーツのシワを伸ばし、カーテンを開けた。
部屋中の白が、窓を通り抜けて射し込む朝日を受けて輝いた。

 彼は目をしばたたかせながら窓を開け、深く深く深呼吸をした。
すると鼻を懐かしい匂いが抜けた。
彼はすぐにリビングに向かった。

 リビングのドアを開けると彼女が味噌汁をテーブルの上に置いたところだった。

 二人は狭いテーブルに隣り合って座った。
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