初恋はカフェ・ラテ色
ベッドの上に救急箱を置いてポスンと座って、ホッと息を吐く。

ペットボトルのふたを開けて飲んでいると、ドレッサーの上に置いたスマホが振動した。

『洋輔さんLOVE』の文字に思わず持っていたペットボトルを落としそうになった。洋輔さんからの電話は本当に珍しくて鳴るスマホを見つめ、一呼吸おいてからペットボトルと交換にスマホを手にした。

「洋輔さん……」
『心春、ケガの具合はどう?』

柔らかくて優しい声が耳に入ってきて、その瞬間たっちゃんの忠告なんて頭から飛んでいた。

「うん! 大丈夫だよ! もう痛くないしっ」
『心春、嘘はいけないよ。けっこうひどく擦っていたから痛くないわけがない』

洋輔さんは諭すように言う。強がっているのがありありと分かってしまったようだ。

『俺には強がらないで正直に言ってほしいな』
「でも……消毒してくれたとき、洋輔さん怒ってた……」

厳しいお父さんのせいで風邪を引いて熱を出したときや、こういうケガだとつい我慢してしまうくせがついていた。

生粋の江戸っ子のお父さんは、熱は甘やかすから。擦り傷は舐めとけば治ると持論を曲げない人なのだ。

だから男の人はそういうものなのだろうと思っており、洋輔さんも厳しい顔つきで消毒してくれていたから言えなくなった。

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