一途な彼は俺様モンスター
やっと私の血が体に馴染んだのか、紙神は余裕の笑みを見せて、肩をコキコキと鳴らし口を開いた。




「…フン…すまんな。俺みたいな元々弱いモンスターには、浅海の血が効くのに時間がかかるんだ…」


新たに力をつけた紙神の喋り方や仕草までが、さっきとは少し違って見えた。今の紙神は自信の中に余裕さえあるその姿は、弱いモンスターにはとても見えなかった。



さっき飲んだ私の血の効き目が、今出たってこと…?

私の血を持ってるなんて、本当に厄介…





「…あいつ・・・まだ私の血を持ってると思う?」

「え?」


私の問に、バネちゃんは首を傾げた。




「どうでしょう…でも、持っている可能性の方が高いのでは?だってあのモンスターは、浅海様の血がなければ空翔様と互角には戦えないくらいの実力デスし…」

「そうだよね…」


あの体に…まだ私の血を隠し持ってるとすれば…私にだって考えはある。だけど…まだそれを実行する時じゃない…




「バネちゃん…後で頼みたいことがあるんだけど…」

「ボクにですか?何なりと申し付け下さい!浅海様の頼みなら、なんでもやりますよ!!」

「ありがとう」


私はバネちゃんの手をそっと握った。そして…その小さな手を、力強く握りしめた。




時間が来たら…バネちゃんに協力してもらえば、何とかなるかもしれない……

空翔が紙神に追い込まれることにはならないとは思うけど…

もしそうなったときは、私が空翔を守る…


無力な私にでも出来ることが少しでもあるなら、力になりたい…







「さぁ、準備は出来た…来いヴァンパイア…」


空翔を挑発するように、手招きをする紙神。空翔はふぅ…と息を吐いたあと、左手を空の上にスッと上げた。

空翔の真上の夜空に、大きくな灰色の雲の渦ができる…






「すごい…あれが空翔の力…?」


空は徐々に雷のような音がして、ピカピカと光始めた。





「ヴァンパイアは飛べるため、空が友達みたいなものデス。空は空翔に味方して力を貸してくれます」
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