一途な彼は俺様モンスター
安心して力が抜けた途端、俺は急に意識が遠のき…地面に倒れ込んだ。

楓雅やマサシが慌てて俺に駆け寄り、向こうから浅海たちもこっちに近づいてくるのが聞こえた。





「空翔!空翔っ!!!」


楓雅が俺の名前を呼ぶ。




「大変だ!出血がひどい…それに・・・翼にかなりの火傷を負ってる…こいつ…わしらに心配されるのを避けてわざと翼をしまってやがったな!」

「えっ…」


マサシの慌てた声が、ところどころ途切れて聞こえて来る…





「空翔っ!」


浅海の声だ…それはハッキリ聞こえた。





浅海…お前はすごい…

あれだけ自分を苦しめた相手なのに、最後は感謝の言葉を送った…

一族と自分の記憶を奪い、殺したいくらい恨んでいるはずなのに…

お前は本当にすごいよ。


兄として好きだった…って・・・別に言わなくてもいいと思うけど…きっと嘘がつけなかったんだろう…


そういうところがお前らしい…


そういうところが…好きだ。




お前を愛してる。心から…









「空翔さま!!」

「早くお前たちの家に運べ!真由子!医療器具は全部揃っているじゃろ!?」

「うん!」


みんなが慌ててる…だけどそれがスローに聞こえるし、目に入ってくるのもすごくスローだ。






「つ、ばさ……」


浅海が俺の手を握る…握り返したいのに、手に力が入らない…


俺は意識が薄い中、楓雅にかつがれてマサシが昔から乗っている愛用の大きな台車のような乗り物に乗せられた。そして酸素ボンベと、点滴をつけられたのはなんとなくわかった。

台車はゆっくりと動き出し、体が宙に浮いた。


隣でずっと、浅海が俺の手を握ってる…






「あ…さ、み………」



俺の小さな声は風に消され、浅海の耳には届かなかった。

俺はそれを最後に意識を失った…








浅海…
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