一途な彼は俺様モンスター
そう…楓雅も私にとっては大事な幼なじみだったことを、記憶を取り戻して思い出した。

記憶がなかった時のことを思い返してみても、楓雅は今のようにいつも優しくしてくれた。


“楓雅さん”なんて呼んでたのに、楓雅は複雑な顔ひとつしなかった。幼なじみの私にそんな他人行儀に接してこられたら、普通はあんなに優しくは出来ないと思う…

…どこか私を避けて生活してもおかしくないのに、楓雅は記憶がない私自身にちゃんと向き合ってくれた。

それは空翔も同じだけど、楓雅は私を幼なじみの友達としてずっと見守ってくれた。記憶を取り戻した今、それがわかって改めて嬉しい…





「楓雅…やっと幼なじみが3人揃ったのに・・私のせいでこんなことに…」

「お前のせいじゃないって…悪いのは紙神だろ」

「そうだけど…」


やっぱりどこか自分を責めてしまう。




「空翔は助かるよ。ヴァンパイアはそんなにヤワじゃないし…だから空翔が目を覚ましてからお前にそんなこと言われたら、あいつに絶対怒られるぞ」


楓雅のその言葉を聞くと、空翔に怒られている自分の顔が浮かび、思わずぷっと笑ってしまった。





「そうだね…」

「そうだよ。だからもうバカなこと考えるのやめろよな」

「うん…ありがとう、ふーちゃん」


楓雅のことを“ふーちゃん”と呼ぶのは、何年ぶりだろう…




「ふーちゃんて呼ぶなよ(笑)」

「ふふ、空翔と同じこと言ってる」


やっぱり幼馴染みっていい。ちょっと話しただけで、すっかり昔に戻ってしまう…

さっきまでの重い空気が少しなごみ、私と楓雅の笑顔を見たバネちゃんの表情も、少しだけ明るくなり安心したようだった。




そうだよね…自分を責める前にまず空翔を信じないとね…

私間違ってたよ…




それから時々3人で会話をしたり、また静まり返ったを繰り返した。

そしてそれから2時間が経過した頃、医療部屋のドアがそっと開いた…





ガチャ…





「出てきた!」

「終わったのか!?」


私たち3人は立ち上がり、一目散に医療部屋へと向かう。部屋から出た廊下の少し離れた壁に、マサシおじいちゃんと真由子さんが並んでもたれかかっていた。





「マサシ!」

「真由子さん!」


私たちが駆け寄ると、2人は同時にこっちを向いてニコッと笑顔になる。その表情を見て結果は大体わかったが、私は2人に近づいて聞いた。






「空翔は…?」


表情をこわばらせているのが、自分でもわかる…手足は微かに震えて、心臓は壊れるくらいドキドキしている。
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