一途な彼は俺様モンスター
「…触ってもいい?」

「…うん」


元に戻った翼に手を近づけて、触って見た。なぞるように触ると、翼は温かくて時々ドクドクと脈を打っていた。





「…これならいいでしょ?空翔…」


治った翼に触れると、また涙が出た。空翔は私の問に答えるように、私の方を向く。




「いいっつーか…もう治ってるし…」

「ふふ」

「でも…」


空翔は私の手を引いて自分の方に引き寄せると、私を思いきり抱きしめた。






「ありがとう…」


少しかすれた空翔の声が、私の耳元で囁く。私は涙を流しながら、黙ってコクりと頷いた。




良かった…本当に良かった…

私にも出来ることがあって、本当に良かった……





「おいおい。それ以上泣くと、俺がもっとパワーアップすることになるぞ」

「っ?」


体を離し、空翔の肩の辺りを見てみると…私の涙が数滴こぼれていた。




「お前の血はケガを治すだけじゃなくて、体力もアップするんだったよな?なら涙も同じだろ」

「あ、そっか…」


やっぱりそうなのかな…




「だからあんまり泣くと、俺が元気になっちまうからやめてくれ」

「ハハハ、わかったよ」


さっきは悲しくて泣いてて、つい数秒前は嬉しくて泣いて、今は笑っているなんて…今日は忙しい日。

だけど、忘れられない日になった…





バッサ…バサバサ…




「きゃ!」


すると、いきなり空翔が翼を思いっきり動かし始めた。

部屋中ものすごい風が吹き、物がガタガタと揺れる。




「ちょっと空翔…」

「いいだろ、別に…試運転だ」


もっと翼を激しく動かす空翔。風が凄すぎて前が見えなくなる。






ガチャ


「な、なんだ!?何事だ!!?」

「空翔、浅海!?」


物音に驚いて飛んできたのか、楓雅とマサシおじいちゃんが慌てて医療部屋にやって来る。





「つ、空翔…お前……」

「翼が!!!」


元通りの空翔の翼を見て、2人は驚きを隠せない様子。





「どうして?どうしたんだよ!」

「後で説明する」


空翔はそう言って部屋の窓を開けると、私を強引に抱えて外に飛び出した。





「きゃー!ちょっと!つ、空翔!!!」
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