一途な彼は俺様モンスター
空翔は私を抱えて勢い良く窓から外に飛び出すと、空高く飛んでいきあっという間に地上が見えなくなる距離に達する。

周りには雲がちらほらと浮かび、高所恐怖症ではない私でも、さすがに高すぎて怖くなる。

強い風が吹く中、私は必死で空翔にしがみついていた…




「こ、怖いっ…」

「これくらいどってことねえだろ」

「どってことある!」


ここから落っこちたら一瞬でイチコロだ。






「やっと2人きりになれた…普段はなかなかなれねえもんな」


冷静に喋る空翔に、思わず怖いのを忘れ私も平常心に戻りながら空翔の顔を見た。

空翔の黒い髪が風になびき、何度か目を瞬きさせると瞳が段々と赤く染まっていくのがわかる…



これが…ヴァンパイア…



すごく綺麗な空翔の顔。私は思わず空翔の頬に手を添えた…






「私が好きになったのは…目の前にいるあなた……ヴァンパイアのあなた…」


そう。私はヴァンパイアである空翔が好きなんだ…





「…俺は人間だけど、その体にとんでもねえ血が流れてるお前が好きだよ」

「ふふ」


私が笑った隙を突いたように、空翔はそっとキスをしてきた。

高い高い空の上。ここには私と空翔しかいない…

2人を風と雲だけが包み込む…






「高校を卒業したら結婚してくれ」


そして唇がそっと離れた時、空翔は私の耳元でプロポーズをした。




「結婚して…俺の子を産んでくれ」

「はい。…でも空翔も高校卒業しなくちゃいけないんじゃないの?」

「あ…そっか。俺も高校生だったけ?」


私がクスクスと笑うと、空翔も吹き出して笑った。時々笑い声が風に消されそうになったけれど、さっきの空翔のプロポーズの声はちゃんと聞こえた。

嬉しい。私、幸せだ…





もうすぐ夕日が沈む瞬間、私と空翔は空の上で永遠の愛を誓った…
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