愛しい君~イジワル御曹司は派遣秘書を貪りたい~
 溢れ出そうな涙を堪えるため、数秒上を向いた。

 落ち着いて、落ち着いて。

 こんなこと慣れてるでしょう。

 自分に言い聞かせると、突然視界が遮られた。

 甘い柑橘系の香りに包まれる。

「馬鹿だな。こんな奴の言うことなんか本気にするな」

 優しく抱き締めると、誉は人目もはばからず私の瞼にキスをした。

 そして、零れそうな涙を指で拭うと私を抱き上げ成宮さんを睨み付けた。

「成宮、文句があるなら俺に言え。これ以上、こいつを侮辱するなら俺にも考えがあるけど」

 表面上はいつも穏やかな誉がここまで感情をあらわにするのを初めてみた。

 誉の眼光が鋭く光る。

「邪魔者を排除するのにあなただって手段は選ばないでしょう?」
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