愛しい君~イジワル御曹司は派遣秘書を貪りたい~
 素直にありがとうと言えないのはなぜだろう?

 なんか誉の罠にまんまと引っかかってる気がするのは気のせいだろうか?

 引越とか、異動とか、契約とか・・・・。

 もっとずっと前から計画してたんじゃあ。

 この海外企画室が出来たのが12月初め。

 うちの会社からは独立した組織で、誉の裁量で全てが決まるような言い方。

 こいつ、本社の会長と何か取引したんだろうか?

 そんな事を考えていると、まだ眠いのか寝ぼけ眼の一ノ瀬くんが現れた。

 私と目が合うと、紙袋を私に差し出した。

「これ、コピーのお礼」

 ちょっとぶっきらぼうだけど、一ノ瀬くんはちょっと照れ屋なだけなのかもしれない。

「仕事だもの。そんな気を遣わなくていいのに。でも、ありがとう」

 笑顔で紙袋を受け取ると、その場で中を見る。
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