ブンベツ【完】


触れられた所が熱を持つ感じも、何も変わってない。

この人はあの時と変わらない優しさで私に触れ続ける。
それが苦しくて、胸が張り裂けそうになって。

どうしてこんな風になっちゃったんだろう……。

どうしてこの人を傷つけてしまったんだろう、ってやるせない気持ちがどんどんと溢れ出てくる。

そんなこと思ってもキリがない上に今更だし、それを選択したのは自分なのに。
そうなってしまった現実がどこか悔しく思う。

悔しくて苦しくて辛くて堪らないそれに心が潰れる予感がする。


「カイさん…………」


ごめんなさい…,

あなたを傷つけてごめんなさい…。


最後のあの日、「ハナッ」って何度も私を呼んで繋ぎとめようとしたカイさんが頭から離れなくて、それが今に重なる。

泣いたらダメだ。
泣いたらまた同じになる。
この人にまたあの時と同じ傷をつけたくなんかないのに、そう思うと気持ちとは裏腹に涙が溢れ出てくる。

止まれって思うのに止まらない涙は頬を伝う。


「ハナ…」


そんな私を見るカイさんはやっぱり眉を寄せ悲しそうな表情で私を見た。


「…わかった、わかったから。もう何もしねぇよ…ハナ」


そう言って私を抱き起こしてそのまま胸へ痛いくらいに閉じ込めた。

傷に傷を重ねた私たちに何があるんだろうと現実に問いかけたい。
戒めというには重いそれは、いつまでこの人を苦しめるんだろう。


"全部忘れてください"


それをカイさんに伝えたい。

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