ブンベツ【完】


目を覚ましたのは、窓から射す光の眩しさからだった。


「…んっ」


やけに冷え込む室内に薄っすらこじ開けた視界に白い吐息が僅かに揺れた。

どうりで寒いわけだ、なんて落ちてくる瞼の裏で今日しなければならないことが頭に浮かんでーーーー。




ーーー仕事!!!!!!


今の今までの眠気が一気に吹っ飛んで目は快晴に開いて思わずベッドから飛び起きた。

だけど視界に入る物や室内の景色にいつもと違う違和感を覚えた瞬間、この部屋がどこなのかという疑問が繋がって更に焦りを覚える。

ここは、カイさんの部屋だ。
昨日アスカさんの思惑通りに事が進み久々に出会ったカイさんに連れてこられて、それから….…、


「…………」


泣きながらキスを交わしたんだ…。

指が自然と唇を撫で、それが合図だったかのように昨日の出来事が鮮明に思い浮かんだ。

久々に感じたカイさんの口唇の感触や熱がまだ残ってる。
後頭部を抑える腕の力とか、唇が触れるときの伏し目がちの目とか全部何もかも同じだった。


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