私と彼と――恋愛小説。
「お待たせ~。久しぶりよね、このメンツで飲むのも」


恭子は苦笑いして杏奈を見る。私はほっとして杏奈を迎えた。


「何よ、真面目な話でもしてた?」


「そうそう、真面目な話。加奈子のとこへ佐伯が乗り込んで来たって話」


「佐伯…佐伯…ああ!加奈子と二股かけて結婚した挙句、更に浮気相手が会社に乗り込んで離婚して左遷させられた、あの佐伯?」


「はいはい…ワザとらしいご丁寧な解説ありがとね杏奈…」


「なによ、加奈子まだ続いてたわけ?」


「んなわけないでしょ…良いから座ったら」


相変わらずお洒落な女だ。国内でも有数のブランドのディレクター。年齢は私と恭子より少し歳上だった。


年下の旦那がいるけれど、結婚してからも自由な人だ。出会ったのはやはり駆け出しの頃だった、多少の年齢差も関係なく何処か戦友の様に感じている。


「相変わらずツヤツヤだね、杏奈」


恭子の言葉に杏奈が笑う。


「そう?適度な仕事と適度なSEXよね。あんた達みたいに仕事ばっかりしてるからダメなのよね」


「だってさ…姉さまの言う事は核心突いてるわ。ねえ加奈子、最近いつやった?」


「…かれこれ半年前」


「……あたしも三ヶ月」


「終わってるねぇ――あんた達」
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