くれなゐの宮
おれはそれ以上、口を開くことができなかった。
質問を投げかける度に、真実に打ちのめされるのが怖かったからだ。
紅ノ間から退室した俺は、宮女たちに隣接する部屋を案内された。
どうやらここがおれの最後のひと月を過ごす部屋らしい。
とても簡素な造りではあるが、朱に統一された豪華な装飾は中々見ごたえのあるものだった。
窓を開け、眼下を見下ろす。
白い壁と黒い屋根の家がずらりと並ぶ町並み。
遠くまで続く赤い提燈が幻想的な雰囲気を作り出している。
そかしどれだけ美しい景色であっても、今のおれには無価値で、腹立たしい。
もしも自分の足でここに来たのならば、もう少し純粋にこの景色を楽しめただろうに。
今はこの国の何もかもが憎い。
何もかもがおれにとっては害でしかなかった。