女子高校生の友情の話をしよう
「由美子さぁ、なんか見苦しくない?」


「あ、分かるぅ」


トイレの個室の中で、外から聞こえる会話に私ははっとした。


「嫉妬丸出し!プライドないんかね」


「ははっひど。」


クラスメートの楽しげな笑い声に、私は身を震わせた。


お前らに由美子の何が分かる。


そりゃ見苦しいだろうよ。


でも失恋後なんてそんなもんだろ、皆どろどろするもんだろ。


由美子はそれだけ本気だったんだよ。


だから吐き出さなきゃダメになるから、由美子ははっきりと自分の嫉妬を口にするのだ。


それに由美子の中に、水野さんを苦しめようなんて意図はない。


由美子は絶対に、水野さんに聞こえる声では悪口言わない。


わざと聞こえるようにして、古池も水野さんも傷つけることだってできるけど、由美子は絶対そんなことしない。


ほんとはそうしたっていいはずだ。


だって、由美子が古池を好きなのはみんななんとなく知ってたじゃないか。


知ってたけど水野さんは古池をとった。


古池も水野さんをとった。


由美子を傷つけること前提の交際じゃないか。


だから、由美子は2人を傷つけたって罰は当たらないはずだ。


でも由美子にそんな意思はない。


由美子は優しいのだ。


そりゃあんたらには理解できないだろうけど、由美子は優しい。


優しくてすっごい良いやつなんだ。


悔しくて、頭の中がぐるぐるした。


でも結局クラスメートが出ていくまで、私は個室の外に出られなかった。


庇ったら、彼女たちの中の由美子への悪感情をさらに増長してしまうから。


それともそれは言い訳で、私は私を守りたかったのだろうか。


なんか、自分で自分が分からない。


教室に戻る気にはなれず、私は一人廊下を逆走した。

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