深海家奇譚


重い空気を遮るかのように鯨達が話はじめた。


「此度の急な帰りだが、百合の婿をみつくろってきた。」



突拍子もない鯨達の発言に、な、と岬平が身動(みじろ)ぐ。


「殿!それは早急にござりまするぞ!姫さまはまだ...」

「黙れ、じい。」



その、有無を言わせぬ物言いに岬平も気圧(けお)されて二の句を次げなくなった。




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