誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「・・・もしもし?」


 和仁さんと別れてすぐにかかってきたという絶好のタイミングが、むしろ私を不安にさせる。


 どこかで見られているような不安に襲われる。


 佑典は今コンクールで、海の向こうのはずなのに。


 「あ、理恵。やっと繋がった。よかったよかった」


 「ごめんなさい昨夜は、電話に出られなくて」


 「いいよ。あんなに遅くなった俺が悪かったんだから。理恵にだって予定あったんだよね」


 「昔なじみとの集まりで、夜遅くまで・・・」


 あまりに複雑な嘘はつけなくて、当たり障りのない内容を答えておいた。


 実際和仁さんは昔なじみなので、あながち嘘にはならないかも・・・。


 「久しぶりに会ったんなら、女同士どうしても話が盛り上がっちゃうよね。時間も忘れるくらいに」


 何も言わなくとも、私が一緒にいたのは「女友達」と信じて疑わない佑典。


 「ごめんなさい・・・」


 「本当に気にしなくていいよ。こっちも慌しくてなかなか連絡できなくてごめんね」


 昼間は演奏で忙しいし、夜は仲間との宴会や、全国から集まっている参加仲間への挨拶回りなどで、なかなか一人になる時間はないらしい。
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