誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「貸してごらん」


 水無月さんは制服の上着をハンガーに通し、干してくれた。


 ホテル中層階の一人部屋。


 出張中のビジネスマン用の、最小限の物しか置かれていない、こじんまりとした部屋。


 「冷えただろう。シャワーで暖まっておいで」


 言われるがままにバスルームのドアを開ける。


 「タオル使っていいから」


 暖かいお湯を浴びて、改めて生き返った心地。


 「冷蔵庫にいくつか飲み物入ってるけど、お茶でいい?」


 シャワーを終えた私にペットボトルのお茶を手渡し、入れ替わりに水無月さんはバスルームに向かった。


 さっきコーヒーを飲んだばかりなこともあり、さほど喉は乾いていなかったけれど、お言葉に甘えてペットボトルに口を付けた。


 待っている間私は椅子に座ってテレビを見ていた。


 国営放送の夜七時のニュース。


 そろそろ天気予報に入る時間帯。


 明日の予報も「曇り時々雨」。


 秋の天気は変わりやすい。
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