誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「・・・もしもし」


 リビングで電話に出た、佑典の声が漏れて来た。


 窓越しに会話がはっきり聞こえる。


 「どうしたの。いつも出かけたらそれっきりなのに」


 やはり和仁さんのようだ。


 「え、俺? 焼き肉食べてたけど」


 何か予感でもしたのだろうか。


 佑典の言う通り、和仁さんが出張先から電話を入れてくるのはかなり異例なことらしい。


 「そんなの関係ないって。帰宅予定日、変わったわけじゃないんでしょ? じゃ忙しいから」


 佑典は強引に、和仁さんからの電話を切って戻ってきた。


 「ごめんごめん。父親だった。何なんだろ。いつも出かけたら音沙汰なしなんだけどね」


 「・・・何か急な連絡でも?」


 「全然。帰宅予定日に変更はないって、それだけ」


 「・・・」


 やはり不審な空気を察知して、探りの電話を入れてきたように思えた。


 佑典はあれこれ言われるのが嫌で、この旅行のことは和仁さんには話していない。
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