誘惑~初めての男は彼氏の父~
 それから夕食の後始末を始めた。


 バーベキュー台から網は取り外し、使った食器や包丁などは洗って片付けた。


 その後もバルコニー上に留まり、佑典が準備した花火を楽しんだ。


 ロケット花火など、派手な音を立てて飛んでいく打ち上げ花火は、他の棟のお客さんの迷惑となるので、禁止されている。


 許可されているのは手持ち花火のみ。


 主に線香花火などを楽しんだ。


 「綺麗」


 最後にクラシカルな線香花火に、二人同時に火をつけた。


 パチパチと小さな音を立てて、ささやかな火花を散らす。


 どちらが長持ちするか、競争した。


 私の方が火花が派手で、生命力が強そうだったのに・・・火の玉がぼとっと落ちた。


 「あっ」


 私の負けだ。


 佑典のほうは、地味な火花だった分だけ長持ちして、しばらく火花が煌めき続けていた。


 「日頃の行いに比例するのかな」


 「無関係でしょ」


 笑って答えたけれど、佑典の何気ない一言が胸に刺さる。
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