誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「記録用アイテムは高額で万引されやすいので、店頭には商品札だけ掲げられてるんだ」


 「えっ。商品本体はどこにあるの」


 「この札をもってレジに行くと、商品と引きかえになるんだ」


 「なるほど。小さい商品で盗まれやすいから、防衛策を講じてるのね」


 その後買い物を済ませてコンビニを出て、車に乗り込んだ。


 長かった合宿から戻ってきた佑典と、久しぶりに過ごす時間。


 あんなに待ち遠しかったはずなのに・・・時折会話に行き詰るのを感じている自分がいる。


 和仁さんと共有する時間と秘密が大きくなりすぎていて、これまでの私の世界を圧迫しつつあるのかもしれない。


 「今度、父さんがヌード撮影をするらしいんだ」


 「え・・・」


 すでに本人から聞いて知っているけれど、今初めて聞いたふりをしなければならない。


 「何を撮ろうと俺には関係ないんだけど、家で撮影するっていうんだ。信じられないだろ?」


 「佑典の家で? 普通撮影って専用スタジオでやったり、ロケに出たりするんじゃないの?」


 「依頼主が、他人の目に付かないところで撮りたいって言ってるらしいんだ」
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