誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「私がちょっと軽率でした・・・」


 ヌードモデルの存在に一方的に嫉妬心を抱き、自宅にまで勝手に押しかけたのも私。


 自宅内では決して関係を持たないとの誓いをあっさり放棄し、和仁さんの寝室で危険極まりない情事を求めたのも私。


 その後もさっさと引き上げず、和仁さんの腕の中、甘い眠りを貪っていたために・・・佑典と鉢合わせてしまった。


 「こんなことを繰り返していたら。遅かれ早かれ、佑典にバレます」


 「そうだね・・・。会えば愛しい気持ちに歯止めが利かなくなり、つい大胆に求めてしまうけど。それは加速度的に終幕へと近づく暴走、まさに自殺行為なんだよね」


 ハンドルを握りながら、和仁さんはため息をついた。


 「別れるにしても、佑典にどう説明するべきか・・・。逆に何もなかったように振る舞い、平然と佑典と結婚なんてできません」


 「結婚?」


 「・・・」


 「・・・佑典との間に、もう結婚の話が出ているの?」


 運転中の和仁さんが、ちらっと私の方を見たので、そっと頷いた。
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