誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「そうか・・・」


 和仁さんは再び遠い目をした。


 「僕もこのままで一生いられるとは、思っていないけど」


 「はい」


 「でも理恵への気持ちは、もうブレーキが利かない」


 「私は・・・」


 私の和仁さんへの想いとは?


 なぜいけないと分かっていながら、その都度求めてしまうのだろう。


 「許されないのは分かっている。でもあきらめ切れなかった。・・・最初は体だけの関係でも構わないと、割り切ろうとした。でも無理だった」


 「和仁さん・・・」


 「今さらこんなことを言っても仕方ないけど・・・。三年前、初めて出会った時、あのまま理恵の手を離さずにおくべきだった」


 ・・・あの時、まだ17の私は。


 手の届かない存在である、年上の男の人に本気になってしまうのが怖くて。


 逃げるように関係を絶ったのだった。


 もしもあの時、勝手な思い込みで逃げ出したりなんかしていなければ。


 今のような、ひどい裏切りに手を染めることなんてなかったのかもしれない。
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