誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「・・・」


 忠告は気にしないようにして、演奏会後の打ち上げに顔を出した。


 佑典とは会場で合流だったため、混み合う打ち上げの席で佑典を探す。


 するとまたしても・・・。


 「やだー。佑典さんったら」


 佑典の脇に、べったりと内村さんが控えている。


 しかも佑典を、名前で呼んでいる。


 その情報は事前に、別ルートから入手していた。


 さすがにちょっと気になったので、佑典に確認を入れたりもした。


 当の佑典は、あまり気にしていない様子。


 オーケストラ部に他にもう一人「中田」って名字の人がいて紛らわしいから、いいんじゃないかってあっさり返答。


 私もあまりぐちゃぐちゃ言うのも憚られたので、静観することにした。


 嫉妬深いだとか思われても嫌だったので。


 ・・・。


 「あ、理恵」


 「それで二曲目の~」


 佑典は私に気がつき、内村さんとの会話を中断しようとする。


 しかし彼女は、そんなのお構いなしで佑典を独占しようと目論む。
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