誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「・・・理恵?」


 「あ、ごめん。つい考えごとを」


 夕べの甘い記憶が、未だに私の頭の中を支配し続けていて。


 授業中もランチタイムも・・・周りの人の声が右耳から左耳へと通り過ぎていく。


 男の人に抱かれるということが、体だけではなくこんなにも心まで満たす行為だなんて・・・。


 「そろそろ出ようか」


 午後からの講義の時間が迫ってきたので、後片付けをして学生食堂を後にした。


 「理恵ってSNSとか、ネット上のコミュニケーションツールには全く興味ないって思ってたよ」


 「うん。私もネット上で自分のことをあれこれ書くのって、あまり好きじゃなかったんだけど。友達がやってるのを真似して始めてみたら、はまっちゃって」


 「俺にもURL教えてよ。コメント残しに行くから。会員制のサイトじゃないよね?」


 ・・・そんなわけで、佑典にブログを教えることとなった。


 まずいことは書かないように、万全の注意は払ってはいるのだけど。


 何らかのきっかけで和仁さんとのことを佑典に勘付かれないか、それが気がかりだった。


 名前は決して記さなくても、行った場所とか時間とかから怪しまれたりして。


 今後、さらにいっそう用心しようと心に誓った。
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