誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「お前、自由にさせすぎ」


 私を信じ、お互い何の束縛もなく付き合っていることに対し、他の参加者は疑問を呈してきた。


 「そんなんじゃ、付き合ってる意味なくない?」


 自分が用事がある夜は、彼女がどこで誰と何をしているのかは、全く干渉しない。


 「お前、いい人っていうか、都合のいい男過ぎるよ」


 酒の席で、その話題でますます盛り上がっていった。


 しかも参加者の中に、佑典と同じ大学に通う友達もいて・・・。


 オーケストラ部内で広まる、私の援助交際の噂を、酒の席でばらしてしまった。


 「あのおとなしそうな彼女がねー。まさかとは思うけど」


 「噂の真偽はともかく・・・。責任の一端は、お前の放任主義にもあるんだぞ」


 そんな問答が続けられているうちに、佑典の中に一つの疑惑が成長していった。


 ベンツ。


 年上の男性。


 ・・・父親。


 (あり得ない)


 佑典は自らが編み出した、一つの仮説を打ち消そうとした。


 ただ・・・、息子の交友関係には全く無関心だった父親が、私のことに関してはあれこれ詮索してきたのが気になっていた。


 しかし息子の初めての彼女というもの珍しさゆえだとみなし、特に深く考えることもなかった。


 「・・・」


 同居者ゆえ、最近父親に外泊が増えたのは察知していた。


 仕事だと理由を述べてはいるものの、人間関係に何らかの変化があったのかもしれないと予感していた。


 二十歳を過ぎた息子がいるとはいえ、まだ若い父親。


 しかも容色は衰えていない。
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