誘惑~初めての男は彼氏の父~
 そんな父親に恋人ができたとしても、何の不思議もないと思っていた。


 以前だったら絶対に許せなかった。


 亡くなった母親の思い出を汚すものだとみなし、父親の第二の人生を受け入れることはできなかっただろう。


 だが・・・時の流れと共に、佑典の考えも変わった。


 すでに七回忌も過ぎた今、父親が誰か愛する人に巡り会えたならば、その人との幸せを祝福してあげようって気持ちになっていた。


 (俺の考えが完全に変化を遂げたのは、理恵と出会ってから。理恵を愛するようになってから・・・)


 自分も間もなく独り立ちするし、父親をいつまでも過去に縛っておくのもよくないと思い始めた。


 (理恵)


 私のことを思い浮かべた時、まさかとは思いつつも恐ろしい仮説が佑典の頭の中に成立した。


 (もしかして噂が全て本当だったら? ・・・父さんが理恵と?)


 最初は荒唐無稽な推論に思えた。


 しかし。


 (そういえば・・・。同じ日付の美術館のチケット)


 それだけでは裏付けに乏しい。


 にもかかわらず、男だけの飲み会の異様な雰囲気の中、佑典の妄想は加速度的に膨れ上がっていった。


 ・・・その後飲み会で、どのような話をしたか、正確には覚えていない。


 何を言われても右から左に流れていった。


 二次会終了後、三次会への誘いを断り・・・私を探して街に飛び出した。
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