誘惑~初めての男は彼氏の父~
 仲間たちと別れるとすぐに、私へと電話。


 しかし電源は切られている。


 メールをしても当然、音沙汰なし。


 ・・・恐る恐る、今度は父親に電話。


 これまた電源が入っていない。


 自宅の電話にかけてみても、誰も出ない。


 いても立ってもいられず、佑典は私の寮へと急いだ。


 私の部屋番号は知っているので、外から私の部屋の窓を眺めてみても真っ暗。


 留守なのを確認し、帰宅するまで寮のそばの自動販売機の陰に潜んで、待っていることにした。


 真夜中でも暑いとさえ感じる、夏の終わりの夜。


 一人夜風に吹かれながら、あらぬ妄想がさらに佑典を侵食していった。


 目に浮かぶのは・・・父親の腕に抱かれる恋人の姿。


 何度も何度も打ち消そうとは試みるも・・・今回ばかりはなぜか疑念から自由になれない。


 (どうして・・・)


 あんなに信じていたはずなのに。


 部内で拡がる、つまらない噂ゆえ?


 火のないところに煙は立たず、とはいうけれど。


 父親の微々たる変化を、息子としてどこかしら察知しているから?


 そして友人たちが、私を放任しているとかで佑典を責めた。


 「自由にしすぎると逃げられる」と。


 「少しくらいは束縛したほうが、互いのためになることもある」などとも。
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