誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「ごめん。酒のつもりにするつもりはないけれど・・・」


 佑典は包み込むように私を抱きしめた。


 私を信じてはいるものの、噂の存在により佑典は絶え間ない不安の中に置かれていた。


 それが飲み会の席で、周囲の連中に不安を掻き立てる言葉を浴びせられ、限界に達した。


 加えて最近、少しずつ感じ取っていた、父親の変化。


 自分の前では父親の顔しか見せないものの、もしかして本当の顔は別なのかもしれない。


 ・・・そういえば、以前佑典が中学校時代の話をしてくれたのを思い出した。


 一時期同級生たちが、男女を問わず、頻繁にグループで佑典の家を訪れていた。


 家には機材などがあるので、和仁さんは仕事部屋には施錠をしたうえで、息子が友達を連れてくるのを了承した。


 その中の一人が、佑典が何となく気に入っていた女の子だった。


 しかもその子が一番積極的に、佑典の家訪問計画を立てていたらしい。


 加えて佑典に、家のことをあれこれ質問したり、話しかけてくるようになった。


 佑典は完全に勘違いしていた。


 その子は自分に気があるに違いない、と。


 そして運命の日が訪れる。


 バレンタインデー、佑典はその子に呼び出された。


 ついに告白か!?


 佑典の胸は高鳴った。


 すると・・・その子がバレンタインチョコレートと共に、佑典に告げた言葉は、


 「これ・・・お父さんに渡して!!」
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