誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「・・・」


 そういえば中学生の頃、佑典の好きだった女の子が、実は和仁さん目当てでショックを受けた・・・って話を聞いたことがある。


 幼稚園、小学校、中学校・・・歴代の授業参観の際、和仁さん以外の保護者は大部分がお母さんで。


 授業参観日のたびに他のお母さんたちは大騒ぎ。


 子供の授業そっちのけで、和仁さんをチラ見したりしてざわついていたという伝説も。


 他の子のお父さんよりずっと若くて、魅力的な父親を持ってしまった佑典の苦悩は、私になど想像もつかない。


 比べられることは日常茶飯事。


 父親が著名な写真家ということもあり、カメラはやらないのか、後を継がないのか・・・と頻繁に質問攻めに遭ってうんざりしたという。


 そんな和仁さんは、佑典にとっては父親というよりも・・・競う相手。


 同じ土俵では到底かなわないので、佑典は武器を楽器に変えて独自路線を歩んだ。


 そして私のこと。


 子供の頃から絶えず、自分の世界というものを和仁さんに侵食され続けてきた佑典は、私のことに関して非常にナーバスになっていた。


 「東南アジア行きを決意した真の理由の一つは、それなんだ」


 「え?」


 「理恵を父さんから遠ざけたかった」
< 370 / 433 >

この作品をシェア

pagetop