誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「・・・誰かと比べてる?」


 キスの合間の言葉。


 最近の佑典は、いつも私の心を見透かすようで怖い。


 「どうしてそんなこと聞くの?」


 「理恵が遠い目をするたびに、不安になる」


 「私、遠い目なんてしてるのかしら」


 「その度に不安になるんだ。俺だけのものじゃないように思えて。これからのことも、過去のことも」


 「過去?」


 「俺、出会う以前の理恵のことを何も知らないし。誰を想っていたのか。誰を見つめていたのか」


 「どうして今さらそんな」


 佑典が初めての彼氏であることは、付き合う時に告げた。


 その発言を受けて、佑典は私が男性経験がないと決め付けたのだけど。


 私はすでに高校生の時、付き合ったわけでもない行きずりの年上の男性と・・・。


 「好きになればなるほど、不安なんだ。一つになれた時の喜びが大きければ大きいほど、離れていく時の孤独もまた大きくなる」


 「孤独・・・」


 「今になって後悔してるよ。理恵と離れ離れになるくらいなら、一人異国へ赴く道なんて、選ぶべきじゃなかったかもしれないって」


 窓の隙間から差し込む月の光が、そっと揺れた。
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