誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「じゃ、僕から先に言ってもいい?」


 「はい」


 「ずるい男だって、理恵は思うかもしれないけど」


 「・・・」


 もしも最悪な答えが姿を現したとしても、私は受け入れなければならない。


 でも私はやはり、和仁さんと離れたくない・・・。


 「僕の考えは、今年一年は今のまま理恵と付き合いたい。そして卒業と共にこの関係にピリオドを打って・・・佑典の元へ」


 「一年間限定・・・ってことですか」


 以前から選択肢に含まれていた案だった。


 ・・・最も利口な方法。


 佑典が遠い異国へ去った後、一年間限定で関係を続ける。


 隠し続けたままで。


 そして一年後、卒業と共に私は佑典の元へと旅立ち。


 全てなかったことにして、佑典に嫁いでいく・・・。


 「本当に・・・、そう上手く行くと思いますか?」


 和仁さんの発言を受けて、私は答えた。


 「お互い割り切った関係を演じ切ることができたら、不可能ではあるまい」


 オトナの関係?


 嘘を重ねて、欲望を積み上げた・・・。


 「最後まで器用に、演じ続けることができますか」


 「さあ・・・。理恵が可愛すぎて、歯止めが利かなくなるかもしれないけど」


 季節はまだ冬が続いている。


 暖房が入っているとはいえ、夜の寒さが徐々に染みわたってきたホテルの一室。


 寒さから守るかのように、和仁さんはそっと私を抱きしめてくれた。
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