誘惑~初めての男は彼氏の父~
***


 「まだ・・・、いいですか」


 汗にまとわり付く私の髪をかき分けながら、和仁さんはそっと唇を重ねてくれた。


 「理恵が望むのなら、いつまでもこうしていてもいいよ」


 「・・・」


 体の底から・・・感じる。


 ・・・。


 「そろそろこれからの話をするか」


 抱かれた後、腕の中で少し眠気に包まれていたところ。


 突然和仁さんが切り出したので、眠気が吹き飛んだ。


 「これから・・・ですか」


 この話になることは、旅行の話が出たときから覚悟していた。


 今後の話をゆっくりするために、わざわざここまでやって来たのだから・・・。


 「理恵の意見を、単刀直入に聞かせてほしい」


 これまで真面目に話し合ったことなど、なかったような気がする。


 将来のことはタブーのような気がしていた。


 未来の話は・・・ベッドの中での戯言のみ。


 「私・・・」


 一人の時とか、これからどうするべきかなど、あれこれ考えているはずなのに。


 面と向かって和仁さんに意見を求められると、言葉を失くしてしまう・・・。


 「言いにくい?」


 「はい・・・」


 私はベッドの上で向きを変え、タオルケットに包まったまま和仁さんのほうを見た。
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