キミとネコとひなたぼっこと。~クールな彼の猫可愛がり方法~
嬉しい気持ちを抑えながら口を尖らせたままチラッと先生を見ると、またくすくすと笑われた。
その笑顔に私は囚われる。
「さてと。ひと笑いして元気ももらったし、そろそろ行くかな」
「あぁっ、長居してしまってごめんなさい!まだお仕事残ってたんですね」
「いや、大丈夫。今日は夕方から患者がくることになっててさ。消毒と様子を診るだけだしすぐ終わるけど、たまに土曜の夕方しか来れないって人もいてさ」
「……先生、疲れてますよね?ごめんなさい。ほとんど寝れてないですもんね……」
「まぁ、そうだなー」
「っ、ごめ……、ひゃあっ!?」
先生の手が伸びてきたと思えば、私の頭をぐしゃぐしゃと掻き回すようにされた。
なになになに!?
「うん。エネルギーもらったから、もう少し頑張れる」
「へっ!?エネルギー!?」
「うん。あ、そうだ。ちょっとだけコタロウ抱かせてくんない?」
「えっ、あっ、どどどうぞどうぞ!」
何で撫でられたのかわからないまま、頼まれるがままに私がコタロウを差し出すと、先生は嬉しそうな笑みを浮かべてコタロウを抱いた。
どぎまぎする私を余所に、先生とコタロウは楽しそうに見つめあっている。
コタロウも気持ち良さそうな顔をして、尻尾をゆらゆらと揺らしていた。
「もう大好きなご主人さまから離れるなよ」
「!」
虎谷先生の口から出てきた“大好き”という言葉にドキッと心臓が跳ねる。
別に先生が私のことを好きだと言ったわけじゃないのに……こんな小さなことで右往左往してしまうなんて、私ってほんと単純。
ぐしゃぐしゃにされてしまった髪の毛を直しながら、ふぅ、と小さく息をついて気持ちを落ち着かせようとする私の傍らで、虎谷先生の言葉に答えるように、コタロウがごろごろと喉を鳴らした。