囚われる心と体
「沢井さんもそんな顔するんですね」
「まーな」
「へー。珍しいもん見れました」
私の目の前でそんなやり取りをする2人。高梨、よくぞ気づいてくれた。これがこいつの本性だとみんなに言いふらしてくれ。
「ところで石原さん。これお願いするよ」
「聞いてましたよね?本日の締めは終わってます」
「はは、残念。だけど今日はそうもいかないんだ。今日中に処理出来るように上の了解はとってあるから」
「上ってどなたですか」
「経理部長だけど?」
彼から視線を外し部長を見れば、両手を顔の前で合わせ口パクで頼むよと言っている。部長めー上手く丸めこまれたな。これじゃ定時に帰れないじゃない。全く疫病神だこの男は。
「分かりました」
ため息をつきながら仕方なく返事をすると、横からスーっと領収書の束を机の上に乗せる奴が。ギロっと睨んでやるとビクッと肩を震わせる高梨。
ふふ、本当に犬みたい。思わず笑ってしまった私を見て高梨も笑った。いつも高梨にはこんな調子で負けてしまうのだ。甘いな私。