彼のヒーローヴォイス

----------------


体育館に割れんばかりの拍手が鳴り響き、前半の幕が終了した。

だけど、劇中、とても気になることがあった。

ロミオ役の同じ2年の市原くんが少しおかしい。

ずっと練習をしてきた相手だから、わかる。市原くん、何か無理している…。
次の幕までは15分。
他の皆がそれを気づいてないうちに、私は泉希の姿を探し、舞台裏へと連れていった。


「怜…もしかして…、市原くん?」


「泉希…、泉希も何か気づいたのね?」


さすが部長だわ。部員のこと、よく見てる。


「うん…後半につれてなんだか調子よくない感じがしたの。」


「…ふむ。 市原くんのところ、行こう!」


後半の20分は私も市原くんも出番はない。それまでに調子が回復すればいいんだけど…。
舞台袖に作られた休憩スペースを探すけど、市原くんの姿はない。
そこにいた部員に市原くんの足取りを聞けば、体育館から校舎へ続く渡り廊下へと向かったという。

急いで見つけないと…。

先を小走りに行く泉希が、立ち止まった。


「市原くんっ!!」


渡り廊下から校舎へ入ったあたりで市原くんが、横たわっていた…。


「ちょっ! 市原くん! どうしたのっ?!」


「大丈夫っ?!」


泉希と二人駆け寄って、市原くんの意識を確認する。


「あ、あぁ、ごめん…ちょっと立てなくて…」

真っ青になりながら苦しそうに言葉を発する市原くん。


「怜、私、先生呼んでくるから、ちょっと待ってて」


「うん、お願い!」


泉希は、校舎へと入り、廊下を猛ダッシュしていった。

< 12 / 71 >

この作品をシェア

pagetop