彼のヒーローヴォイス

学園祭が終わって、数週間が経った。

純一からは、東高の推薦の合格メールが来て、『おめでとう』の返信を送ってからは
なんの音沙汰もない…。


準備とかいろいろ忙しい…の…かな。


会って、あの時のこと、聞きたいんだけどな…。
キスしてくれた、ってことは…
純一も、私と同じ気持ち…なんだよね…?


学校を出て寮へ帰る道で、そんなことを思いながら歩いていると…。


私のななめ前からスーツを着た30歳前後の男性と、どピンクの…あれはケリーバックに違いないな、
それを持った同じ30代くらいの女性が近づいてきた。


え…。私になにか…用なのかな…
あ、道、かな…?


「あの、」

私に近づいたケリーバックの女性は、意外にも大きくて…。
私を見下ろすようにして問いかけられた。


う…。なんだか、怖そう…。
少し、身構えて二人に目を向ける。


「香坂 怜さんよね?」


ロングの巻き髪がふわりと揺れ、バラの香りが漂うケリーバックの女性が、私の名前を言った。


「え…。あ…。はい…」


あ、しまった…、こんな時は、自分の名前言っちゃいけない、って母が言ってたのすっかり忘れてた。


「あの…? なにか用ですか? 私、急ぎますので。」


胡散臭そうな2人を振り切ろうと足を一歩出すと…。
ケリーバックの女性が、私の手首を掴んだ。


「な、なんですか? 普通、何か尋ねるなら、自分のこと名乗ってからじゃないですかっ?!
いったいなんですかっ? 私、帰るんですけどっ」


見知らぬ相手だからこそ、強気に出られる。


「ごめんなさいね…」


掴んだ私の手首をパッと離した。


「気分を害して申し訳ない、我々はこうゆうものです。」


女性はケリーバックの中から、四角いケースを取り出し
男性は、スーツの内ポケットから
手のひらに乗る長方形のサイズの紙を私に差し出した。


差し出されたものは一応受け取らないと…。
両手でそれを受け取り、そこに書いてある文字を読む。


“(株)スイートドリーム  マネージャー  荒井 芳彦”

“(株)スイートドリーム 専務 加賀 文乃”


んー 会社名?と名前だけでは、目的が何なのか、わかるはずもない。





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