彼のヒーローヴォイス
「おいっ!!」
今にも掴みかかられそうな時、私の左手の方から聞き覚えある声が聞こえた。
「お前ら、なにやってんだよっ?!」
彼女らに向こうへ行けと言わんばかりの表情の純一。
「何って、私たち、君塚くんを守るためにやってンのっ!
君塚くんは1年女子の王子なんだから、勝手に彼女とか作らないでよねっ!」
「はぁっ?! お前ら何言ってんだっ?!
彼女作る作らないは、オレの自由だろ?!
それに、怜は、幼なじみだ。 変なちょっかい出すな! ほら、もう! 帰れっ!」
犬を追い払うようなしぐさで彼女らを私から離してくれた。
「ね? 純一って…王子なの?」
自転車を引きながら前を歩く純一に気になったことを聞いてみた。
「そ、そ、そんなことっ、知るかよっ!
あいつらが勝手に言ってるだけだろ? オレは王子でもなんでもねぇよっ!」
私の顔を見ないで、少し照れくさそうにぶっきらぼうに答える純一が、
ちょっぴりカワイイなぁ…なんて心の中で思った。
ふふふ…ま、いつか笑い話で覚えておこっと。
「それより、怜、話ってなんだった?」
思い出したように立ち止まり、純一が振り向いた。
そうだった…。
今朝のことを言うために、純一と一緒に帰る約束をしたんだった。
ちょうど、帰り道に公園があるので、入口に自転車を停め、ブランコへと向かった。
3つあるうち、向かって一番右手のブランコに座り、ゆっくりと漕ぐ。
私の後ろを何も言わずについてきた純一が、ブランコを漕ぐ私をじっと見つめる。
よし…。