K
俺たちの大学からほど近くに川が流れている。
その河川敷での花火は、うちの学生恒例の夏の終わりを締めくくるイベントだ。
今年で4年目を迎える俺たちも、そのスタイルが定着していた。
駅前で待ち合わせていた俺たちは、そこから大学まで歩いた。
大学2年のときに見つけた、穴場があるのだ。
去年もそこで花火を見た。
そのときは、沙雪もいたな。
皆同じことを考えるので、学内に学生が多くいた。
河川敷まで行くのもいいが、なにしろ人が多い。
毎年この日だけ、大学の最寄り駅が機能しなくなる。
そういうわけで、学生は花火から少しばかり遠ざかるが学内で見ることを選ぶのだ。
屋上はダメだ、人が多い。
部活終わりや、サークルの学生が飲み騒いでいる。
俺たちの向かうのは、教室のある10階建ての棟の一番奥の非常階段だった。
「お、螢出番だぞ」
「オウ、任せろ」
螢が前に進み出る。
非常階段の扉は、この時間になると鍵が閉まってしまう。
螢は手慣れた仕草で鍵になにか細長いものを差して細かく動かす。
カチカチ、という金属音が静かな構内で響く。
まるでその姿は陳腐な泥棒とか、スパイのようで面白い。
最後にカチャ、という聞き慣れた音が聞こえた。
「空いた」
「すごーい」
毎度のことだが、陽世子はいちいち感激する。
そんな特技、どこで身につけたのかは知らないが普通にすごい。
螢のこの特技のおかげで、俺たちは誰もいない秘密の場所で花火を楽しむことができるのだ。