強がりあいっこ。
もう、なによ!
なんていうおばさんの声もしたが構わない。
俺は人々を押しのけ、
やっとの事で端に立っていた彼女の前に立った。
それと同時に
タイミングよく開いたドアから逃げていったのは中年のサラリーマンだった。
「すまない、逃がした」
俺の前で小さくなる彼女は
まだ怯えた顔をしていた。
「あ…、大丈夫です、
すいません、…きゃっ」
全然大丈夫ではない顔で
なぜか俺に謝るその子。
混み合う車内では
彼女はほんとに押し潰れてしまいそうで、
俺は、車両の角と自分で彼女を囲うようにして立った。
彼女はしばらくその俺との近さにあたふたしていたが
「君、潰されそうだから」
って言ってやると、
あ…、すいません…
なんていってまた謝る。
「謝らなくていい、
心配だから、俺が勝手にやってる」
…結局、
俺は自分の最寄りを過ぎて彼女を送り
終電を逃したのであった。