サヨナラからはじめよう
初めのうちはショックの余りしおらしく泣いたりもした。
何度もやめてほしいと泣いて縋った。
その度に奴はこれでもかとベロベロに甘やかし、身も心も蕩けさせられ、気が付けば許してしまっている自分がいた。

だが、喉元過ぎればなんとやら。
ほとぼりが冷めた頃にまた奴は同じ事を繰り返す。
そして馬鹿な女は泣いて縋りまたほだされる。
その滑稽なやりとりは度々繰り返された。


今思えば何て愚かで馬鹿だったのかと思う。

自分が。


元はと言えば奴が悪い。
けれどそんな奴をつけ上がらせたのは他でもない自分だ。
バカな男にバカな女がくっついたらそれはもう恐ろしい化学反応を起こすのだ。
嫌というほど身をもって経験した。


それに気付かなかったバカな女はその後も何度も縋り付いた。
初めて付き合った男。
初めて全てを捧げた男。
初めてづくしで頭が麻痺してしまっていたのだろうと思う。

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