サヨナラからはじめよう
そんな人間でもいつか熱が冷めるときはくる。
バカはバカなりにふとした瞬間我に返るときがあるのだ。

最後に浮気されたのを知ったとき、それまでとは明らかに違う自分がいた。

それまでなら、真っ先にショックを受けて泣いた。
泣いて泣いて。
一人で抱えきれなくなってあいつにそれをぶちまける。
喧嘩にならない喧嘩をして、最後には言いくるめられる。
これでもかと甘やかされて、やっぱりこの人が好きだなんて思っていた。


あぁ、なんておぞましい。


でもあの時は違った。

知って最初に思ったのは「あぁそうなんだ」だった。
完全に第三者になってしまっていた。
ずっとずっと当事者として苦しんでいた。
でもあの時はびっくりするほど冷静な自分がいた。
幽体離脱でもして見てるんじゃないかというくらい、他人事だった。


だからその事実に気付いても何の反応も示さなかった。
あいつはいつもと違う私の様子に戸惑っていた。
いつもならここで泣きわめいて怒るはずなのにって。

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