サヨナラからはじめよう
「そういう涼子さんは?俺が見てる限り男の気配はないですけど」

『男の気配』
その言葉であの男の顔が思い浮かんでしまう。
ぶんぶんと頭を振って思考から追い出すと、盛大に溜息をついた。

「私は今はそんな気分になれないわ。もう男はこりごり」

「・・・何かあったんですか?」

「・・・単純な話。私の男を見る目がなさすぎるってだけ」

「それって」

「もうさー、付き合うまではすっごいいい男だったのよ?イケメンなくせに硬派で優しくて、しかもそんないい男の方から好きだなんて言ってくれて・・・でもいざ付き合い始めたら豹変。いつも女の影がちらつくようになってた」

これまで誰にも話したことなんかない。
自分があまりも不甲斐なさ過ぎて。
だから今日の私はどこかおかしかったんだと思う。
それもこれも諸悪の根源に再会してしまったから。
気が付けば酔った勢いでペラペラと口にしてしまっていた。
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