好きになったわけ
しかし、仕出かしたことについてはもはやどうしようもない。割り切る、というよりかは半ば諦めて、僕は学校へ行く準備をし始めた。
時刻が九時を少し過ぎた頃、僕は学校に遅刻するという連絡を入れ、はあ……ともう一度重たいため息を吐いて、家を出るのだった。


自転車をこぐ足取りが重い。原因は僕にある。
いつもと変わらない荷物を背負っている筈なのだが、心なしか重く感じられる。
僕が通っている高校へは大体自転車で三十分くらい。歩けば約一時間と言ったところだ。そう遠くはない距離なのだが、今ばかりは憎らしく感じる距離だった。
そもそも家族の誰かが起こしてくれれば、と責任転嫁を図ろうとする僕だったが、よくよく考えると、父親は単身赴任だし母は早朝に仕事に出る人だし、大学生の姉は論外。あの姉貴は平気で昼まで寝てるし。
やっぱり誰のせいでもなく、自分のせいだとわかると、ますます足にかかる重圧が加算された錯覚に陥る。
いかん、ポジティブに行くんだ、ポジティブに。こう、なにかの拍子で美少女と遭遇イベントとか。ないか、ないよね。

「あの……」

「ひゃい!!」

交差点でくだらないことを考えていた僕に、急に話しかけるもんだから驚いた拍子に変な声が出た。
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