金魚は月夜に照らされて



「やっぱり泊まっていきなよ」


傷付くことにも慣れてしまった私の身体は、いつの間にか都合のいい言葉ばかりを認識するようになった。腹を立てることも、彼を責めることも、嘆くことも、涙を流すことさえ、すべては無意味なのだとわかっている。

おいで、と手招かれれば、悲しみや悔しさなんてものは彼の指先に溶けて無に変わる。距離が縮まるほどに息苦しくなって、ゼロになれば呼吸も忘れて。

だらしなく口を開いてあなたを乞うから、「金魚みたいだ」って言ってよ、気休めでいいから。



〔金魚は月夜に照らされて〕

(痛い、辛い、苦しい、悲しい、そんなもの、その指に触れてもらえない虚しさに比べたら無に等しい)
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