金魚は月夜に照らされて
そうして私の気持ちをすべて引きずり出して晒した後で、だからなんだ、と嘲笑って放り捨てる。それは出会ったその日から今日までずっと、何度身体を重ねようが、唇を合わせようが、変わることはない。
そしてきっと、これからもずっと。
彼は私の気持ちや心の行方が知りたいわけではない。それを無理矢理に暴かれて、その上非情にも投げ出された惨めな私が、それでも自分の元へと戻ってくる、自分の元から離れられないということが、きっと楽しくて仕方ないのだ。
羨ましい、なんて。
一瞬でもそう思ってしまった自分に腹が立つ。そして、それさえ見透かされていながら文句のひとつも言ってやれない自分があまりに情けなくて、涙が出る。
あぁ、惨めだ。
「やめてよ、たかが金魚じゃないの」
せめてもの抵抗にと、震える唇をどうにか動かして言い捨てると、彼は本当に楽しそうに、恍惚にも似た表情でその薄い唇をひらいた。
「たかが金魚にもなれないくせに」