天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~
 視線を下ろしていても、あたしに注がれる晃さんの視線を感じる。

 とても顔を上げられなくて、身の置き所が無くて、体を固くして防御するように背を丸めた。

 机の上のバインダーをチェックするふりをして、背中に冷や汗をかきながら必死に彼の視線をやり過ごす。

 やがて晃さんは今日の講習を始めた。


「……それでは今日は、ダイヤモンドについて講習したいと思います」

「やったー! 待ってましたダイヤモンド!」


 詩織ちゃんがパチパチと拍手しながら笑った。

 今日ばかりは彼女の底抜けの明るさが本当にありがたくて、心の中で拝んでしまう。

 当分の間は、こうやって詩織ちゃんに独り舞台で盛り上がっててもらおう。


「ふたり共、4Cって言葉を聞いたことがあるかな?」

「はーい、ありまっす! ダイヤモンドを評価する基準ですよね?」


 カラー (色)

 クラリティー (透明度)

 カラット (重量)

 カット (形状)


 これらの4つの評価基準の頭文字を合わせて、4Cと呼ぶ。

 これらの評価の総合点により、ダイヤモンドの価値が決まる。


「まずはカラーから。ダイヤモンドはね、無色や黄色や茶色の物が多いんだ。これらは『ノーマルカラー』と呼ばれている」

「ふうん、全部が無色じゃないんですねー」

「そこはやっぱり自然の物だからね。一般的には無色ほど良いとされているけど、ピンクやブルーのダイヤもあるのを知ってるかい?」

「知ってます。ピンクダイヤとかって有名ですよねー?」


 グレー、ブルー、イエロー、オレンジ、レッド、グリーン、ピンク、パープル、ブラウン、ブラック。

 これらの濃く美しい色合いのダイヤは、『ファンシーカラー』と呼ばれて珍重されている。
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