天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~
 少し気落ちしながら晃さんの視線をたどると、彼はホテルの前の大きな噴水を見ていた。

 噴き上がる薄い水の壁にライトアップが施され、ユラユラと様々な色に変化している。

 涼やかな水音と、見事な色彩の演出効果に思わず惹きこまれてしまう。


「ほんとだ。すごく綺麗ですね」

「うん。まるでオパールの遊色効果みたいだね」

「ゆうしょくこうか?」

「オパール特有の、あの虹色に輝く現象をそう呼ぶんだ。遊色効果のあるオパールを、プレシャス・オパールって呼ぶんだよ」


 遊色効果のあるオパールを?

 つまり、そうじゃないオパールもあるってこと?

 オパールってどれもこれもみーんな、白い地色の中が虹色に光るものだと思ってた。


「遊色効果のないオパールは、コモン・オパールって呼ぶんだ。ありふれたオパールって意味」

「あ、ありふれた?」


 な、なんかそれって、地味に過酷なネーミングじゃない?

 思わず親近感を感じてしまいそう。コモン・オパールさん。


「ファイヤー・オパールって呼ばれる石があってね、これは地色が赤やオレンジ系のプレシャス・オパールなんだけど」


 晃さんが顔をしかめた。


「遊色効果が無いコモンを、色が赤やオレンジだからってだけで『ファイヤー・オパール』として売ってたりするんだよね。本来のファイヤー・オパールって、炎が揺らめく様に美しいプレシャスなんだけどなあ」

< 56 / 187 >

この作品をシェア

pagetop