恋ごころトルク

「バイク、乗ったことある?」

「いえ。自転車しかありません」

 駐輪場に歩いて移動しながら、先生と話す。昨日、ヘルメットを被ってみたけれど、こういう習慣無いし、重くて……。あと、先生の声も少しだけ聞こえにくい。少しだけだけどね。

「原付も?」

「触ったことも無いんです……」

 そうかー、先生はそう言って、1台のバイクの前に止まる。「初心者で女」って、きっと先生も嫌なんだろうなぁ。
 新品で馴染んでいないバイクグローブの手を、きゅっと握って気を引き締めた。

「車は?」

「あ、マニュアルで取りました」

「じゃあ半クラの意味というか感覚、分かるね」

 光太郎さんにも聞かれたなぁ。半クラ、重要だよね。車でもそうだったけど、バイクでも重要事項なんだね。 

「それじゃあ、これね、400ccのバイクです。ギアをチェンジして加速減速していくバイクで……」

 ホンダ。それくらいは読めるし分かる。「CB400」と書いてある、シルバーに青いラインが入ったバイクだった。大きい……! これで普通二輪、いわゆる中型免許なの!?

「サイドスタンド、センタースタンドで……」

 各部名称の説明を先生がしているけれど、そんなに一気に覚えられません。前タイヤ後ろタイヤぐらいで良いですか?

「じゃあ、サイド払って、そしてセンタースタンド立てて駐車してみましょう」

 え、いきなり? でも、実戦あるのみよね。

 さっき先生がやってくれた。自転車を止める時のスタンドみたいなのが、バイクの真ん中に付いている。これを、勢いつけてバランスと体重移動で立てるのだ。先生も「よいしょー」ってやってる感じだったけど……。

 バイクのハンドルは左に切ってある。こういう風に止めるものらしい。そして、ぐっと力を入れてハンドルを真っ直ぐにして、車体を真っ直ぐに立てる。


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